俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会

各自治体首長のエッセイ

#7:俳句・「おくのほそ道」

宮城県大崎市長 伊藤康志
(会員誌「HI」No.137掲載)

大崎市は、宮城県の北西部に位置し、東西に約80㎞の長さを持ち、南北に東北新幹線、東北自動車道、国道4 号が縦断しています。市の中心部は県北部の交通の要所として商業、行政、都市サービスの拠点としての機能を果たしています。市内には国内でも有数の温泉である鳴子温泉郷や、ラムサール条約登録湿地である蕪栗沼、化女沼などの豊かな自然資源があり、大崎耕土と呼ばれる水田地帯とそれを支える伝統的な水管理システムは世界農業遺産に認定されています。

本年6月より、本市も日本文化の宝である俳句を無形文化遺産に登録するという目的に賛同し、俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会に参加をいたしました。俳聖として世界的にも知られる松尾芭蕉の「おくのほそ道」は、日本文学史上でも屈指の紀行作品として位置づけられ、古の歌人達によって永遠に伝えられる松島や平泉などの歌枕を訪ね歩いた旅として、現代の人々にとってもあこがれの旅となっています。

本市にも、歌枕となった地があり、「小黒ヶ崎(おぐろがざき)」、「美豆の小島(みずのこじま)」、「玉造江(たまつくりえ)」は平安時代からの歌枕であり、岩出山から堺田への途中で訪れていることが「おくのほそ道」や曾良の旅日記から分かります。また、「緒絶の橋(おだえのはし)」も平安時代からの悲恋の歌枕として知られています。

芭蕉が旅した「おくのほそ道」は、本市の一部の区間を歴史の道「陸奥上街道」、「出羽仙台街道中山越」として保存整備し、国の史跡に指定されています。栗原市一迫の境から本市岩出山地域の町内へと向かう「陸奥上街道」には、旧街道の面影を残す「千本松長根」や河童の伝説がある「磯良(いそら)神社」、塚の盛土が対で残る「天王寺一里塚」があります。芭蕉が厳しい取り調べを受けた鳴子温泉の「尿前の関」から始まり山形県最上町の堺田へと向かう「出羽仙台街道中山越」は、「おくのほそ道」に大山をのぼりてと記されるとともに険しい峡谷を通る難所であり、源義経が東下りの際に野宿したとの伝説が残る「甘酒地蔵」があります。これらの整備した街道筋には、所々に芭蕉を偲ぶ句碑も建っています。

協議会の皆様とともに、ユネスコ無形文化遺産登録を目指し、世界に俳句を発信する活動を行うことにより、国内外の人々に俳句と「おくのほそ道」のすばらしさを再認識していただくことで、日本文化への理解とインバウンドへの弾みとなることを期待しております。