俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会

各自治体首長のエッセイ

#8:地域で育てる「俳句の学校」

秋田県八峰町長 森田新一郎
(会員誌「HI」No.139掲載)

八峰町は、世界自然遺産「白神山地」の麓に位置し、町の西側は日本海に面し、北部は県立自然公園にも指定されている起伏に富んだ岩浜が特徴の滝の間・岩館海岸があり、夏場は多くの海水浴客で賑わいます。

町の東側は、秋になるとソバの花が咲き乱れる東雲大地、アユが生息する河川などを有する、自然に恵まれた風光明媚な町でございます。

現在、生薬栽培が行われ、のど飴のテレビCMで上映されるなど、「生薬の町」としても全国に発信しているところです。また、数年前からは、アワビの陸上養殖も行われており、年間をとおしてホテルや民宿、道の駅等でアワビグルメ料理が堪能できるようになりました。

この白神山地周辺や海岸部には、地球科学的に見て貴重な地形や地質などが多く残る場所で、これらを保全、利活用するユネスコのジオパーク活動にも取り組んでおり、自然観光と絡めた観光振興を進めております。

江戸時代後期の紀行家、管江真澄が訪れた地域でもあり、その際、茅葺きの民家と桃の花が咲き誇る様子に感動し、中国の詩にある「桃源郷」になぞらえた「手這坂集落」もあり、桃の開花時期の5 月連休には、町内外から多くの見物客が訪れます。このように、恵まれた自然や古い歴史や文化に育まれた地域であることから、古くから俳句に親しんでおり、ポンポコ山公園の「碑のけどっこ」には町民の詠んだ多くの句碑が並んでいます。

この方々が指導者となり、やがて学校の正課クラブに俳句の学習が取り入れられるようになりました。地域と学校が一体となった俳句への取り組みはやがて全国的にも有名な俳句の学校「塙川小学校」を生み出しました。

同校は、全国規模の俳句大会で何度も全国一に輝く常連校となり、少子化の影響で統合し「峰浜小学校」と名称は変わりましたが、現在もその伝統は脈々と引き継がれ、多くの小学生俳人を生み出しております。この俳句への取り組みにより、子供達の感性が磨かれ、集中力が高まる事で、全国学力テストでは、常に全国トップレベルの好成績が保たれています。

町では、新たな取り組みとして、平成27年度から、秋田県内の100校余りの全小学生を対象に「あきた白神子どもの俳画大会」を主催しており、毎年多くの作品が寄せられております。

これからも、「俳句」を核とし、町と地域指導者、学校が一体となり、体力、知力ともに優れた子どもの育成に力を注いでまいります。