俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会

各自治体首長のエッセイ

#16:歴史・文化を未来へ

富山県高岡市長 髙橋正樹
(会員誌「HI」No.147掲載)

高岡市は富山県の北西部に位置し、日本海に面する、深緑と清らかな水に包まれた自然豊かな地域です。慶長14年(1609年)、加賀前田家2 代当主前田利長公によって高岡城が築かれ、高岡の町が開かれました。以来、400年にわたり、銅器、漆器や菅笠などの「ものづくりの技と心」を脈々と受け継ぎ、時代の流れの中で創意を積み重ねながら、富山県西部の中核都市として発展してきました。

また当市は、万葉集の編さんに中心的な役割を果たした大伴家持が、天平18年(西暦746年)から国守として赴任し、多くの歌を万葉集に残した「万葉のふるさと」としても知られております。昨年、万葉集を典拠とする「令和」が新元号となり、多くの方から注目を集めています。

市北部の景勝地「有磯海(ありそうみ)」は、その大伴家持の古歌にちなんだ越中の代表的な歌枕です。近世では、松尾芭蕉が、「有磯海」の海景を「わせの香や分入右は有磯海」の句に詠んだ由緒地であることから、「おくのほそ道の風景地」として、国の名勝に指定されております。

当地からは、有磯海すなわち富山湾越しに3000メートル級の立山連峰の大パノラマを望むことができ、四季折々に変化する雄大な眺めは、息を呑む美しさです。家持が愛し、芭蕉が詠んだ歌枕の地は、時空を超えて、今も変わりません。私たちは、これらの歴史文化を活用したまちづくりを推進しています。

本市では、「高岡御車山祭」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを機に、平成29年から、祭りが行われる5 月1 日を「高岡の歴史文化に親しむ日」と定め、市内の小・中・特別支援学校を休業日として、子どもたちに歴史・文化の魅力を再発見してもらいたいと考えています。その実践として、子どもたちから、本市の歴史・文化をテーマとした俳句、短歌、壁新聞を募集し、その表彰を行っています。

これからも、古代から近世、そして現在に至る高岡の貴重な歴史・文化資産を大切にして、未来に向かってさらに磨き上げ、歴史都市高岡の魅力の向上と、市民意識の醸成等に取り組んでまいります。

協議会の皆さまとのネットワークにより、俳句という文化を通して、日本各地の歴史・文化資産の魅力を世界に伝え、文化が未来へ継承されていくことを期待しております。