俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会

各自治体首長のエッセイ

#5:俳句文化がまちに甦る日を目指して

北海道石狩市長 田岡克介
(会員誌「HI」No.135掲載)

北海道石狩市は、札幌市の北隣、石狩湾に面し、石狩川河口部を含む南北80キロメートルに及ぶ海岸線と豊かな山林、さらに北海道の物流拠点である石狩湾新港を抱える都市です。鮭とともに歩んできたその歴史は古く、江戸時代初期にアイヌと和人が鮭の交易を行う「場所」が設定されてから、西蝦夷地の政治経済の中心地として発展しました。

こうした隆盛を支えた人々の中で俳句が盛んに詠まれるようになり、江戸時代末期には石狩川河口の本町地区で俳句結社「尚古社」が、また、明治中期には農耕地域の生振に入植した愛知県団体員により俳句結社「弥生社」が結成されました。特に明治期後半の尚古社には漁業支配人、商業人、医師、小学校長、町長などの町の名士のほか幅広い層の町民も参加し、道外から有名な俳人や文化人を招くなどして活発に活動していました。このようにして石狩には地域を挙げて全体が俳句に親しむ文化が形作られ、こうした活動は戦前まで続きました。この俳句文化をもう一度現代に蘇らせようと、本市では平成17年から毎年秋に「『俳句のまち~いしかり~』俳句コンテスト」を開催しています。これまでに27,000もの素晴らしい句が詠まれておりますが、第13回目となった昨年の天位は「砂さ嘴し統すぶる石狩灯台雲の峰」この句を含め、その年の天位受賞作品を刻んだ句碑を本町地区の観光道路沿いに建立し、多くの方に鑑賞して頂いております。また、同じく本町地区には、大正期に「尚古社」社主だった呉服店主の曾孫が開設している私設資料館「石狩尚古社」があります。ここでは、当時の社主が全国各地と交流して収集した俳句資料や書画などを整理・展示しており、往時の石狩に花開いた俳句文化の片鱗に触れる事ができます。

さらに、俳句コンテストと同時に、市内の児童生徒を対象とした「こども俳句コンテスト」も開催しています。自由なテーマのもと、子どもならではの視点で、喜怒哀楽や感動がのびのびと表現された句を見ると、こうした豊かな感性を失うことなく、これからも俳句との関わりを保ちながら育っていくことを願わずにはいられません。

俳句は、日本のすばらしい文化です。市花「はまなす」を詠んだ有馬会長の句碑が本市に建立されている事もご縁となり、この協議会に参加させて頂きましたが、ユネスコ無形文化遺産登録を目指して俳句を世界に発信する協議会の活動は、私どもの俳句文化再興の取組みに通底するものを感じます。これからも協議会の皆様方とともに活動してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。(注:原文のママ)