#18:『俳句(Haiku)から世界へ』
石川県小松市長 和田愼司
(会員誌「HI」No.149掲載)
加賀前田家三代利常公が寛永16年(1639)に家督を嫡男光高公に譲り、小松城に入城して以来380年を迎えた。令和2年(2020)は小松市制80周年の節目です。利常公が在城時に行った産業奨励や文化振興、城下整備などが今の小松の礎となりました。
小松で俳句が盛んになる契機として、明暦3 年に利常公が小松天満宮を創建し、初代別当として、京都北野天満宮より連歌の第一人者として活躍していた能順を招いたことが挙げられます。能順は、小松の人々と連歌を楽しみ、越前屋歓生のような文化人を育成、文化発展に大きく貢献しています。その歓生は、元禄2 年に松尾芭蕉翁が『おくのほそ道』の旅で小松に来訪した頃には、小松の俳諧の中心人物であったと考えられ、自宅に招き句会を開いています。また、小松は『おくのほそ道』紀行の中で唯一芭蕉翁が二度訪れた地です。その目的は俳句を嗜んだ加賀藩士生駒万子や万子を通じて能順に出会うためともいわれています。
現在、小松の俳文学協会には約100名の会員が在籍し、14の部会に分かれて定期的に句会を催しています。また、小松市では、「奥の細道ゆかりの小松」を全国へ発信するため、「芭蕉の俳句で絵手紙」や「奥の細道ゆかりの地めぐりマップ」の作成、ボランティアガイドによるツアーなどを行ってきました。平成24年には全国の縁のある30自治体が参加し「奥の細道サミット」を開催、合わせて俳句と絵画または写真を組み合わせた「小松ビジュアル俳句コンテスト」をスタート、本年で第9 回目を迎え日本全国から投句いただいています。また、昨年度開催した「おくのほそ道紀行330年祭」では、貴会に審査協力をいただきビジュアル俳句コンテストに英語俳句の部を新設しました。2 年目となる今年は、総投句数約600の内130句余りの外国語俳句がアメリカやカナダ、中国、ドイツ、スウェーデンなどから投函され、英語俳句を授業に取り入れている大阪の中学校も参加しました。英語俳句の部により、俳句をとおした世界交流の輪が広がり始めています。
言葉を探し、読み手と聞き手が句をとおしてその情景を共有することができる「俳句」(Haiku)という文化が世界に認められてきていることを改めて実感しています。このことは貴協議会の長年に渡る取り組みの賜物といえ、今後も協力して俳句文化を発信してまいりたいと存じます。