#22:海を越えた千代女の俳句
石川県白山市長 山田憲昭
(会員誌「HI」No.153掲載)
白山市は、平成17年2月に1市2町5村が合併して誕生し、人口は約11万3千人で石川県では2番目に多く、面積は県内最大の広さです。
県都金沢市の南西部に位置する本市は、日本三名山の一つである白山、県内最大の流域を誇る手取川、白砂青松の日本海など、豊かな自然に恵まれた地域です。白山周辺は、白山ユネスコエコパークや白山国立公園に指定され、山間部から海岸部までの標高差と環境変化に富んだ市全域が白山手取川ジオパークとして認定されています。
「朝顔やつるべとられてもらひ水」の句で広く知られる江戸時代の女流俳人加賀の千代女は、加賀国松任(現在の白山市)の表具屋の娘として生まれました。幼少期から俳諧をたしなんだ千代女は、17歳のときに松尾芭蕉門下の各務支考よりその才能を絶賛され、生涯にわたり句作にはげみました。宝暦13 年(1763年)には、加賀藩の命により朝鮮通信使への贈答物として、21句の俳句をしたためた掛物と扇子を献上しており、俳句による国際交流の先駆けを果たしています。
明治になると、日本独特の文化をヨーロッパやアメリカに伝えようと俳句に注目する人たちが現れました。イギリス人バジル・ホール・チェンバレンは、明治21 年(1888年)、「口語日本語ハンドブック」の俳句の項において一番最初に千代女の朝顔の句を紹介しました。次いで、イギリス人エドウィン・アーノルド、ドイツ人カール・フローレンツ、そしてギリシャ生まれのラフカディオ・ハーン(日本名・小泉八雲)らも取り上げていて、千代女は日本を紹介する大きな功績を果たしています。
現在本市では、多くの愛好家によって受け継がれてきた俳句文化を普及・継承するため、105回を数える伝統ある「千代女全国俳句大会」をはじめ、「千代女少年少女全国俳句大会」の開催や市内各所・小中高校に俳句ポストを設置しています。
また、俳句を通した交流・体験活動のための拠点施設として、平成18年に「千代女の里俳句館」を開館しました。俳句館では、千代女を始め多くの俳人たちを紹介するとともに、子ども達や外国の方にも俳句を作り楽しんでもらえるようなコーナーを備えています。
これからも全国に向け「俳句のまち白山市」をさらに発信していくとともに、多くの人に愛されている俳句が世界中に広がるよう、貴協議会の皆様とともに推進してまいりたいと存じます。