#35:俳句を身近に感じられるまち“ いちかわ” を目指して
千葉県市川市長 田中 甲
(会員誌「HI」No.167掲載)
市川市は、千葉県の北西部に位置し、江戸川の豊かな流れや緑あふれる景観が広がるとともに、都心に近く利便性と落ち着いた住環境が共存する住宅都市です。北部丘陵地帯には堀之内貝塚、曽谷貝塚をはじめとする数多くの遺跡があり、7 世紀には下総の国府が置かれ、今なお多くの文化財や伝統が残る文教都市として発展してきました。また、南部の行徳地域では古くから塩づくりが行われており、戦国時代には江戸湾岸における最大の塩の生産地となりました。江戸時代には徳川家康が行徳の塩業に対して手厚い保護を行い、航路や街道の整備が行われ「行徳千軒寺百軒」と言われるほど賑わい、成田山詣の中継点としても発展しました。現在も神輿製造に関わる人々が居住し、地域独自の祭礼が盛んな寺社町として知られています。
市川市では様々な文化が育まれてきましたが、特に俳句とはゆかりが深く、江戸時代には松尾芭蕉や小林一茶、明治以降には正岡子規、高浜虚子、水原秋櫻子などの著名人が市川の風景を詠んでいます。戦後は本協議会の能村会長のお父上である能村登四郎氏をはじめ、多くの俳人が市内に居を構え、俳句結社や句会による盛んな活動が今日まで続いており、その足跡として、多数の句碑、歌碑が建立されております。
「梨咲くとかつしかの野は とのくもり」水原秋櫻子
「真間寺で斯う拾ひしよ 散紅葉」小林一茶
これらの句からは、文化人たちが市川市で過ごした当時の様子や風景を想像させられます。どこか郷愁をかきたてられるのも、俳句の魅力の一つだと感じます。
市内には俳句を愛好する方が多く、能村会長を中心とする市川市俳句協会との共催で開催されている「市川市市民俳句大会」は、昨年で76回を迎えました。さらに、前年度には市内の小中学生を対象とした「市川市ジュニア俳句大会」も実施され、世代を超えて俳句に親しむ機会が広がっています。また、市川市に今なお語り継がれ、万葉集にも詠われた「真間の手児奈」を冠した全国公募の文学賞「市川手児奈文学賞」には俳句部門があり、毎年多くの作品が寄せられています。
これからも市民の皆様が俳句を身近に感じられるよう、文化都市いちかわとして精一杯努めてまいります。そして日本の伝統文化である俳句がユネスコの無形文化遺産に登録され、世界の人々に親しまれる文化となる一助になれれば幸いでございます。


