俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会

支援の声

俳句を全ての人に、永遠に

ヘルマン・ファンロンパイ

日本で生まれた世界で最も短い詩である俳句は、今や世界中で愛好されています。

俳句は、今の世界が抱える問題に対する一つの答えであり、また人間として精神状態を健やかに保つために必要なものであると強調しなくてはなりません。何故でしょうか。

今、世界はテクノロジーに支配されており、高度に組織化され規制されています。ひとたび、コロナウィルスや戦争のような事態が起きれば、供給ラインは止まってしまいます。全てが完璧かつ複雑に組織化されているため、たった一つの不具合が全体を混乱させるのです。この対局にあるのが、簡素な俳句であると言えます。

俳人は季節を生きます。季節の変化やそれによって表れるさまざまな小さなものごとから目を反らしません。たった17音で、これらの観察や体験を詩に昇華させます。複雑な現代社会の中で、俳句を作ることで、人生本来の簡素さに立ち返ることが出来るのです。

俳人は、ときに自然が牙をむき、季節が気まぐれを起こすことも承知しています。だからこそ調和を求めるのです。暴力や戦争を支持しません。戦争の脅威が間近に迫る今の時代、改めて、俳句が平和を望むものであること、俳句が安らぎを人々の心にもたらしてくれるものであると痛感しています。調和は、ねたみ、欲、対立、怒りとは相容れません。これらの感情を俳句は遠ざけてくれることがあります。また、辛い毎日を耐えられるものにしてくれるのが俳句です。

身の回りの小さな物事に焦点を合わせ、それを言葉に昇華するとき、心の中に優しさが広がります。俳人は回りの出来事について優劣をつけることをせずに、アンテナを張っています。つまり、一人の人間として「今、ここ」に生きている実感を俳句は与えてくれるのです。

こうして俳人は慎み深さを養い、現実をあるがままに受容します。身の回りに起きる出来事に注意と敬意を払い、自己中心的な考え方をしなくなります。俳句を通して人間性が磨かれます。

詩を書く時は独りですが、俳人はグループで句について議論し、添削をします。
つまり、俳句には社会的な次元もあり、芸術性に加え、技巧的な面もあると言えます。個人主義がはびこり、社会は細分化され、寸断され、分極化し、不寛容となっています。他者の言うことを傾聴し、敬意を払うことは簡単ではありません。しかし俳人はその限りではありません。

俳句はよくソーシャルメディアの「ツイッター」と比較されますが、大きな違いがあります。ツイッターでは否定的であり、誇張された個人の意見が投稿されます。一方で俳句は、自分自身を大げさに語らず、虚栄心を見せびらかすといったこととも無縁です。

私が心より応援するこの俳句ユネスコ登録推進協議会の活動は今年で6年目を迎えました。2017年に、当時、国際俳句交流協会会長であった有馬朗人先生が推進協議会を組織し、主要俳句四団体と47の地方自治体とともに創立の運びとなったのです。俳句ユネスコの国会議員連盟も同年に創設され、現在では64名の議員からの応援を頂いています。岸田総理は議員連盟の会長です。2020年3月に、正式書簡を文化庁に有馬先生が手渡しました。残念ながら、先生は登録の日を待たずに、2020年12月に他界されました。

我が朋友、有馬朗人先生の生涯で最後の願い「俳句を通して世界平和を!」を実現できるように、我々は努力を惜しまず、行動を続けたいと思います。

俳句幾世
日本を越えて
救いし永遠       ヘルマン・ファンロンパイ